その後、彼は「ルンバ」をはじめとする掃除ロボットや爆弾処理ロボットのような軍用機器の開発を手がけるアイロボットを共同で創業する。彼が08年に創業したRethink Roboticsは、既存のロボットに勝る使いやすさを目指した「バクスター」と「ソイヤー」という2種の業務用ロボットを生産した。しかし、同社は販売不振を理由に18年に倒産している。
人間と同じ空間で働くロボットが急増
人間のボディーランゲージを読み取って反応する機能は、ロボット技術全般を飛躍的に進化させる可能性がある。ただし、それにはブルックスの新会社であるRobust.AIがほかの企業を納得させて製品を買ってもらわなければならない。
大型の産業用ロボットは、いまだに周囲の人を傷つけないよう囲いのなかで作業をすることが通例となっている。工場や倉庫では車輪つきの運搬ロボットや、人間の近くで安全に作業できるよう設計された低出力型のロボットアームが使われることが増えてきた。それでも人間とロボットは相変わらず別の場所で作業している場合がほとんどだ。
業界団体の国際ロボット連盟(IFR)のデータによると、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による伸び悩みの時期を越え、業務用ロボットは世界各地で堅実に売り上げを伸ばしている。
直接的な補助作業をするか否かは別として、人間と同じ空間で働くロボットを意味する“協働ロボット”の20年における販売高は世界で6%増加した。一方、同時期の産業用ロボット全体の売り上げは0.5%増にとどまっている。
こうしたなかアマゾンは22年6月、人間の存在を感知する初歩的な機能を備えた「Proteus」という移動型ロボットを新たに導入すると発表した。これまでアマゾンの施設で働いてきたロボットたちは人間とは別の場所で働いており、商品が載った棚を作業員の近くまで運ぶといった作業をすることはある。これに対してProteusは、人間が働いているエリア内を自由に動き回ることができるのだ。
Proteusはセンサーで人や障害物を察知し、何かに衝突しそうになると停止する。今回の発表からは「人とロボットのより本格的な協働を目指すアマゾンの投資意欲がうかがえます」と、アマゾンのロボット工学部門バイスプレジデントを務めた経験をもつブラッド・ポーターは言う。ポーターは現在、スタートアップのCollaborative Robotsの創業者兼最高経営責任者(CEO)として、人間とより緊密に連携しながら働くロボットの開発に取り組んでいる。
人間のために働くロボット
Robust.AIは、人間の作業員が何をしようとしているもかを察知して手助けするロボットを開発することで、アマゾンに大きく差をつけたいと考えている。それが実現できれば単純な反復作業に従事する人が減り、労働者たちは新しい仕事に専念できるはずだとブルックスは言う。
「人間をロボットに置き換えようとしているわけではありません」とブルックスは言う。「ロボットのために人間を働かせるのではなく、人間のために働くロボットをつくりたいのです」
大型で威力のあるロボットをも安全に動かすソフトウェアを開発するVeo Roboticsの共同創業者兼最高技術責任者(CTO)のクララ・ヴューは、人間とロボットがチームを組んで仕事をする機会はますます増えていると指摘する。ロボットが周囲の様子を検知してマップ化し、人間の職場内を自由に動き回るための技術は、どこでも当たり前に必要とされるようになっているからだ。
— to wired.jp